今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。

ZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)
と言う成分を御存知でしょうか?

毎度の事ですが長くなったので
2部に分けさせて頂きました。

弊社のマッハ1にはコレも入っています。


既に半世紀以上前からオイルに使用されている成分で
現在の市販オイルにも使われています。

これは複合的な効果を持ち、長らくエンジンオイルには
必須とまで言われてきた成分で、エンジン内だけではなく
排気触媒・環境問題にも関係する要素を含む成分です。

ZnDTPの性能は下記の通りです。

摩耗防止性
シリンダー軸受け・ライナーなどの面に付着し、
耐摩耗性に優れた効果を発揮し、荷重が極端に加わった時、
その金属と反応し特殊保護膜合金を形成し、
直接金属同士の接触を避け、
エンジンの焼き付きや摩耗を防止します。

この、特殊保護膜を作るという処をそのまま流用して
○○に配合されている成分が特殊皮膜を形成して云々・・
と言うお馴染みの宣伝文句を謳う製品が非常に多い訳です。
(弊社製品でも謳っているので偉そうには言えませんが)

同じような文句に、金属と反応して特殊皮膜形成云々・・
と言う奴もあります。 

この皮膜形成の成分が亜鉛や塩素や
モリブデンやその他諸々の成分で
どの成分もその作用・弊害等が広く認知されている物で
特別珍しい成分が入っている訳でもありません。

特殊皮膜形成と言う文句ですが
確かに嘘では無いし、間違いでも無いですが、
皮膜形成に関してその商品が
特別変わった作用をする訳でも無いし、
他での使用を許さない特許成分でも無いし
普通のオイルにも含有されている成分ですので
そうなると、4Lで980円位の激安オイルでも
特殊皮膜形成云々と書いても良い事になります。

じゃあ、猫も杓子も・・となります。
確かに 虚偽では無いので 謳うのは結構ですが
その成分の働きはそれだけか?
各部を腐食したり、良からぬ事を企てる心配は無いのか?
その問題が有る成分ならばその対策は出来ているのか?

と、当然、湧き起こる疑問ですが
商品説明ではその内容には一切触れず
利点ばかり先行して宣伝している処をみると
何の対策も講じていないのでは?
判断されても致し方有りません。

まぁ、そのような対策を講じていない製品は
概してロングライフ性能を持つ事は無いので
その辺を考慮しても解ります。

当製品に含有される○という成分は
添加剤として優れた効能を示しますが
同時に各部を腐食させる弊害があります。

しかし、当社独自の技術により
この弊害を完全に抑制する事に成功しました。

と、書いてあれば素晴らしい宣伝文句に成るわけです。

それこそ、右も左も同じ事ばかり書いてある商品棚で
他の製品と大きく差別化を図る事も可能です。

更に、各部に付着と言う処も勝手に曲解して
『吸着・密着・連結・結合』とインパクトが強い
言葉に置き換える訳です。
当然お約束の、強力に・強固に・等の枕詞も忘れません。

以前から、この手の謳い文句に対して
一体、何と比べて強固だのクソだのと謳うのか?
と言う根本的な疑問を製品を買う前にユーザーに
持って欲しいと私は申してきました。

計測データ上でも誤差範囲程度の向上しか
認められないのならばとても、強固だの 結合だのと
言う言葉を使う事は適切では無い筈ですが、
そんな微々たる向上でも
向上は向上ですから否定は出来ません。

『我が社の製品を用いる事で誤差範囲では有るが
性能の向上が認められます。貴方の車にも如何ですか?』
と言われて買う人が居るのか甚だ疑問では有りますが
実際売れているから何とも羨ましい話です。

まぁ、そんな馬鹿正直な販売戦略では無く
巧みな戦略で売っている訳ですが
眉唾物でも戦略さえしっかりしていれば売れる訳です。

まぁ、売れた分だけ怒りに震える人が居るという事も
忘れてはいけませんね。

昔と違って悪評は瞬く間に世を駆け巡らせる事が出来る
インフラが構築された訳ですから、生半可な事は禁忌です。

この辺がオイル添加剤が胡散臭いと言われる元凶でしょうね。

他にも以下の性能があります。

腐食防止性
金属の表面に保護膜を形成して、腐食を防ぎます。
具体的には、金属の酸化触媒反応を
防ぐことによる腐食防止があります。

劣化防止性
オイルの酸化による劣化を防止します。
具体的には、ラジカル基の不活性化などにより
酸化反応を抑制します。

ZnDTPの特性として摩擦調整剤(Friction Modifier)
(MoDTC)
ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンが有名
と言われる油溶性モリブデン(下記に簡単な用語解説)を
共存させると相乗効果により単品で使用するよりも
摩擦・摩耗低減効果が得られます。

(用語解説)
油溶性モリブデンは金属表面に吸着し化学的反応により
低せん断な二硫化モリブデン被膜を形成し、境界潤滑時の
潤滑面を保護する働きが明らかにされています。
しかし、エンジン油には使用される添加剤の種類が多く
それらの影響によって効果は大きく左右されます。
金属系洗浄剤を添加すると概して
MoDTC(ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン)
の摩擦低減効果を妨げる傾向を示します。

また、モリブデンの摩擦低減効果は
ベースオイルの質によっても効果が左右されます。

ベースオイルがPAO(Polyalphaolefin)、
POE(Polyolester)
(どちらも化学合成油。エステル系等が有名。)
ではPOEの混合比率が高くなると摩擦低減効果が減少します。
しかし、Znの濃度を高めると摩擦低減率を高めたままで
より多くのPOEを配合する事が可能になります。

今回は字数の制限の為、軽く概要だけ触れておきます。
モリブデンに関しては次号以降で解説させて戴きます。

さて、今回はZnDTPの長所を書きました。

次号ではZnDTPの短所及びその弊害を書こうと思います。