皆様Lostwordの石原です。
今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。
さて、前回では、機構の話ばかりでは
読むのが面倒だという方の意見を尊重して
雑談を交えた訳ですが、そうすると
ATの項での話に納得する所があり
CVTの話も楽しみにしていたのに。と言う
有難い御言葉を戴いたり
何の前触れも無く、唐突に雑談を挟む処を考えると
発行日までにCVTのメルマガを
完成出来なかったのではないのか?
と言う、勘ぐりをされる方も居られました。
まぁ、配信予定の原稿が未完だから回避策として
新たに、2500文字を超える文章量の雑談を
わざわざ構築する方が大変だと思うのですが
発行部数600あたりを前後している
この屑メルマガに此処まで留意して頂けるとは
何であれ有難い限りです。
ではCVT編に参ります。
長文化したので二部構成でお届けさせて頂きます。
まず、オイル添加剤に関して言えば
製造側が確かな効果が認められる
製品を供給していると、それを購入したユーザーが
他の部分にも使える処は無いか?と言う流れになるのは
至極当然なのですが、しっかりとした知識も
認識も無いままに、ユーザーの独断で、本来の
使用目的と違う箇所に投入すると思わぬトラブルになる
原因になるというのは『ATFにオイル添加剤は不要?』
の項で述べさせて頂いたとおりです。
何度も何度もオイル添加剤は用途と目的を考えて
使わないと意味がないとこのメルマガで説明したとおり
エンジン用の添加剤を動力伝達系統に流用したりすると
当然、おかしな事が起こる訳です。
エンジン内とATやCVT機構の内部では全然環境も違いますし
機械の構造もオイルに求められる作業の内容も違います。
(旧MINI等の一部車種ではATFとエンジンオイルを
共用しているが昔の未成熟な技術の問題で好ましいとは言えない)
バイクでは現在でもエンジンオイルとミッションオイルを共用する
機構になっており、その為、怪しげな添加剤を入れると
車以上にその反応が顕著に走りに影響し
クラッチが滑ったり、異音がしたり、誰も望まない
様々な効能を享受出来て、全く有り難迷惑な話です。
バイクはエンジンの真上に人間が乗っているので
異音などの異変にも気づきやすい訳です。
更に生身を晒している訳ですので、走行中にいきなり
機械が不良を訴えれば即、生死に直結する事になりかねません。
その為、バイクの説明書には
『変な添加剤を入れると異変の元になるから止めろ』
と、しっかり明記されています。
上の例を出すまでもなく開発段階から
使用箇所はエンジンとデフ。と言うように
異なる箇所でも効能を示すように開発を進めている商品ならば
添加しても全く問題無く、効能書きにある効能を発揮します。
しかし、本当に昨今の自動車事情は環境云々や経費削減云々と
厳しい要求とその回答を矢継ぎ早に求められ
オイル・添加剤の領域だけでは対処出来ず、
エンジン自体の製造行程から改善を行ったり、
エンジンの材料を根本的に見直したりと
今までに無い大改革が随所で行われております。
当然、新技術が投入されたエンジン等にはそれに相応しい
オイルや添加剤でなければ、エンジン本来の性能を発揮出来ない。
と言う事になります。性能向上を狙って投入したのに
逆に足を引っ張る結果になる訳です。
効果が無いだけなら怒るだけで済みますが
本来の機能に支障を及ぼす。と言う事は絶対に有ってはなりません。
何で今更、こんな解り切った話をするかと言うと
特にCVT機構等に使われる
トラクションオイル等は単純に
潤滑すれば良いと言う代物では無く、
潤滑も必要だが動力の伝達も同時に行う。
と言う性能が求められます。
この事を認知せずに、ユーザーの独断でその機構に
使用するべきではないオイル添加剤(眉唾物含む)を投入したり、
メーカー推奨外のオイルを使用した場合、
当然不都合が起こる可能性が出てきます。
車が動かない。効果が無い。なら二次被害が無く
安全と言えるかも知れませんが
動いている最中に異常が起こった場合はどうしましょう?
原因が何であれ、何らかの問題が起きた場合
真っ先にドライバーが責め立てられる訳です。
更に今回取り上げている箇所は変速機構なので
壊れると頭を抱える程の多大な修理費が必要になる箇所です。
少し位安いからと言って出所が怪しいオイルや
作用原理のよく解らない添加剤を投入して調子が悪くなり
クソ、安物は駄目だな!と怒りながら仕方なく修理見積を取ったら
再び激怒するような額の見積が出てきた。と忙しい限りです。
そこで
『あぁ、ケチらずに純正にすれば良かった・・』
『やっぱり怪しいと思ったよ。アレ・・』
と後悔しても後の祭りです。
私もオイル添加剤を売っている身ですから
色々な方のオイル添加剤に関する失敗談を
伺う事が多いです。
『入れたけど効果が無かった。金が無駄になった。』
と言う意見が多数ですが、
中には『エンジンが焼け付いてパーになった。』
『異変に気づいて、オイルを交換したが正常に走らなくなった』
と言う意見も伺う事があります。
効果が無かった。と言う方と、車が壊れた。と
言う方と何が違うのかと言えば使用状況などでは
殆ど何も違わないのです。
当たり前ですが不正な使用法をして壊れた場合
わざわざ他人に壊れたと言う方は居ませんね。
車を壊すのが目的でオイル添加剤を投入する人など居ませんし
壊すのが目的なら金を払って添加剤を買わなくても添加剤の代わりに
オイルに水でも入れておけば安く簡単に再起不能になります。
ただ、壊れた方は運が悪かったと言う事に他なりません。
しかし、運が悪いから壊れたんですよ。とメーカーに
反論されて納得する人など居ませんね。
車が壊れるかもしれない。と言う危険が全く無ければ
このような問題は起きないのですが現に起きているのです。
眉唾物とはこういう危険も含んでいる訳です。
ATの項でも、お話しさせて戴いたように
車の機構自体が既に一般ユーザーの理解の範疇を超える
領域で稼働している部分が多々あり
特にATやCVT等の変速機構では
言葉が悪くて恐縮ですが
素人考えが通用する箇所では無いと言って差し支え有りません。
素人考えと言っても自分で適当に調合した物を入れる訳じゃなく
市場に売られている製品を投入する訳だし
大体、その手の品は専門家が造っている物だし大丈夫だろう。
と言う一見もっともな理論をお持ちかも知れませんが
そのような理論は捨てた方が宜しいかと存じます。
その理由は、先程も登場した眉唾物の存在です。
上記で言う専門家とは、技術的に優れたと言う訳では無く
製品の開発・販売を生業にしていると言う意味であり
この手の専門家が全て技術的に優れて居るという事ではないのは
市場に溢れる眉唾物がどれも専門家が携わった物だと言う事を
考えると理解出来るかと思います。
店舗等の売る側にしてみれば詳細な作用原理云々より
その製品が売れるか否か。と言う事だけが重要な訳ですから
宣伝に長けていて売れそうな品ならば店に置く訳です。
一定期間置いて売れなければ次回から納入しなければ良いだけで
効果云々・作用原理云々まで配慮しませんし
多数のカー用品を網羅しなければならない店で
逐一製品の性能検査を行う程暇はありません。
作用原理など勉強する暇も気も無いというのが現状で
売り場で店員に聞いても製品の裏の宣伝文句を読んで
答えるだけの稚拙な対応しか出来ない点がそれを表しています。
一番重要な点が配慮されずにPR面だけが重視されて市場に並ぶ。
と言うのも大変憂慮するべき点ですが現状はそんな物です。
そんな、作用原理が宇宙の果てにあるような製品の効能書きを
信じて躊躇無く車輌の最重要箇所に投入すると
結果は察して知るべしという事になります。
この辺を踏まえて、素人は触るな。
素人(上記のような店員含む)の言う事を真に受けるな。
と言う事です。
偉そうに上から物を言うような文体で
反感を買うのが目に見えているのですが
自分の車が壊れて喜ぶ人は居ないと思うので
敢えて、触らぬ神に祟りなしと言う意味合いで書かせて頂きました。
さて、素人は触るな。と言うその理由は
次号で説明させて頂きますが
まず、CVTの基礎的な話をさせて頂きましょう。
現在車に使われているCVT機構は
オランダで開発されたベルト型CVT
ドイツで開発されたチェーン型CVT
そして日本で開発されたトラクションドライブCVTが有ります。
CVT機構を文字だけで説明する為に
何度も文章を構築していたのですが
文字だけで機構を説明するのは非常に難しく
この場ではCVTの構成については省かせて頂きます。
百聞は一見にしかず。と言う様に
この機構を非常に解りやすく動画で説明してある
有難い企業のサイトが有りますので其処を御参照下さい。
http://www.jatco.co.jp/PLAZA/TECH.HTM
此処の左の項のAT技術PLAZAと言う項の
That’s ATと言う項のシミュレーションは
非常に解り易く解説されています。
上のサイトを御覧頂ければ
CVTとはローラーやプーリーを介して動力伝達を
行うと言う事を理解して頂けると思います。
さて、ここから我々、潤滑屋の出番です。
ローラーやプーリーを介するという事ですが
高速回転する金属部に直接ローラーや
金属ベルトをゴリゴリ接触させると、どうなるか解りますね?
金属同士がゴリゴリと高速で長時間、接触すれば
焼け付いて壊れます。しかし、普通の油で潤滑すれば
ツルツル滑って動力伝達もヘチマも有りません。
動力の伝達には粘度が高いオイルが有効ですが
高速運動時に粘度が高いと負荷が増える事になります。
更に温度変化で粘度が大きく変わる事も好ましくありません。
環境面を考えても車のオイルの使用温度範囲は
一般的にマイナス30度(極寒冷地での始動時の油温)
から140度(走行中の油温)と非常に範囲が広く
負荷の具合も箇所によって低負荷の場所や
高負荷の場所と様々です
これも考慮して製造しなければなりません。
エンジンの場合は内部で強力な動力を発生させる為
多少オイルの粘度が変化しても動作不良を起こす事は
有りませんが動力伝達系統で粘度変化による
動作不良は車として使い物になりません。
沖縄で使っていた車をフェリーで北海道に輸送したら
一応走る事は出来たけど変速のタイミングが滅茶苦茶になった。
では話になりません。
さて、次号ではCVTの中でも特にオイルが重要な働きを
もたらすトラクションドライブCVTのオイルについて
お話しさせて頂きます。